予定を埋めることが、仕事とは限らない。町を歩き、人に会うことで見えてきたこと〜地域の事業者や役場との何気ない会話〜
その日の予定表を見返すと、何も書かれていないことがあります。
会議もない。訪問の予約もない。「今日は何もない日」のはずなのに、気づけば夕方まで町のあちこちを回っていて、事務所に戻ってから「今日、何をしていたんだっけ」と振り返るのに少し時間がかかる。そんな日が、皆野町で働くようになってから増えました。
きっかけは、たいてい人からの紹介
平日の午前中、ある事業者さんのところに顔を出します。用件はちょっとした確認ごとでした。
話が終わって帰ろうとしたところで、「そういえば、〇〇さんのところも似たようなことで困っていたよ」と一言。
せっかくだからと、そのままその足で〇〇さんのところへ向かいます。
行ってみると、確認ごとはすぐに終わり、あとは雑談です。最近の商売の調子、町の近況、ちょっとした困りごと。仕事といえば仕事ですし、世間話といえばそうとも言えます。
これが、ローカルで仕事をするということなのだと感じています。都会であれば「担当者につないでもらう」ために何通もメールを送るところを、この町ではひとことの紹介で、その場で扉が開きます。予定表には載らない動きですが、これがなければ次の仕事は生まれていなかったかもしれません。
役場からの電話は、たいてい「少し出向く」で終わる
「少し相談したいことがあって」と役場から電話をいただくことがあります。
たいした用件ではないことも多いのですが、電話口で説明するより、直接お会いして話したほうが早いことがほとんどです。そこで、少し出向きます。
行ってみると、相談は5分ほどで終わります。ただ、そのあとに「そういえば、今どんなことをされているんですか」と聞かれ、最近の進捗を共有する流れになることも少なくありません。世間話のような、報告のような、その中間にあたる会話です。
これも、予定表には「役場と打ち合わせ」としか記録されません。ですが実際にそこで起きているのは、相談への回答と、こちらの近況共有という、2つの役割を兼ねたやり取りだったりします。
「ついでに寄る」ことが、結果として効率的になる
役場に用事があって出向いたついでに、商工会にも顔を出す。そんなこともよくあります。
大きな理由があるわけではありません。「せっかく近くまで来たので」というだけのことです。ですが、この「ついで」の一言が、意外と馬鹿にできません。
用件がなくても顔を出しておくことで、次に何か相談したいことがあったとき、こちらから声をかけていただきやすくなります。
都会の仕事であれば、「用件のない訪問」はむしろ非効率とされます。
アポイントなしで伺うのは、かえって迷惑になることもあります。
ですが、この町では、用件のない立ち寄りこそが、次の仕事につながる種になっているように思います。
「忙しい」の中身が、都会とはまったく違う
こうして振り返ってみると、予定表が真っ白な日にしていることは、会議でも作業でもありません。人に会い、話し、次につながる何かを残してくることでした。
数字には残りませんし、目に見える成果物があるわけでもありません。ですが、こうした積み重ねがなければ、次に相談を持ちかけていただくことも、事業者さん同士の紹介が生まれることもないだろうと感じています。
都会で働いていたころの「忙しい」は、予定がぎっしり詰まっていることでした。
この町での「忙しい」は、予定がないからこそ、あちこちに顔を出して回っていること。同じ「忙しい」という言葉でも、その中身はまったく違うものだと、この町に来て気づかされました。
念のため申し添えますと、これは決して悪い意味ではありません。むしろ、この「予定に入らない仕事」の積み重ねがあるからこそ、この町では物事が早く進むのだと感じています。
紹介から紹介へ、立ち話から次の相談へ、予定表を埋めることよりも、町の中を歩き回ることのほうが、結果として仕事につながっているのです。
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