伝わらないのは相手のせいじゃなく、私の説明が独りよがりだったから〜デジタルラボみなの現場記〜
「便利なのは知ってるんだけどね」
皆野町でデジタル化の相談を受けていて、いちばん多く聞く言葉がこれです。
便利なのは知っている。でも、やり方がわからない。聞ける人もいない。
だから、紙のままにしている。
これは「できない人」の話ではありません。「聞ける場所がなかった」という話です。
「DX」という言葉は、たぶん届いていない
私は最初、「DX支援をしています」と自己紹介していました。でも、あるときから気づきました。この言葉、ほとんど伝わっていない。
うなずいてもらえるけれど、そのあと質問が出てこない。それは理解されたからではなく、質問のしかたがわからないからだと、しばらくしてわかりました。
だから、言い方を変えました。「デジタル化のお手伝いをしています」と。
それでも、まだ足りませんでした。
「デジタル化って、具体的には?」
この質問を受けたとき、私は少し詰まりました。
言われてみれば、当たり前のことです。「デジタル化」も十分に抽象的な言葉です。それを説明せずに使っていたのは、私のほうでした。
だから、こう答えるようになりました。
「今、紙で管理しているものを、パソコンで管理できるようにすることです」
たとえば、名簿。たとえば、売上の記録。たとえば、在庫の一覧。
紙のノートに書いているものを、ExcelやGoogleスプレッドシートに移すだけで、検索できるようになる。合計が自動で出る。書き間違えても、消しゴムは要りません。
そう説明すると、たいてい「ああ、それならわかる」と言ってもらえます。
「そもそもスプレッドシートって何?」
この質問をもらった日のことは、よく覚えています。
私は当たり前のように「スプレッドシート」と口にしていました。略さず、正しい名前で言っていたつもりでした。
でも、正しい名前で言えば伝わる、というものではなかったのです。
その言葉が何を指すのか、どんな場面で使うものなのか——それを知る機会が、そもそも共有されていなかった。伝わらなかったのは、言い方の問題ではなく、私がその前提から説明していなかったからでした。
このとき、はっきり自覚しました。
伝わらないのは、聞き手の理解力の問題ではない。話し手が、相手の言葉で話していないだけだと。
それ以来、私は言葉を選ぶようになりました。「スプレッドシート」ではなく「Googleの表計算ソフト」。「クラウド」ではなく「インターネット上に保存しておく仕組み」。
長くなります。でも、伝わります。
「聞ける場所」が、なかっただけ
デジタル化が進んでいない、という言われ方をすることがあります。
でも、実際に相談を受けていると、それは少し違うと感じます。
紙で管理しているのは、怠慢だからでも、遅れているからでもありません。紙で、ちゃんと回っていたからです。日々の仕事はきちんと動いていて、困っていることも特にない。そのなかで、わざわざ別の方法を試す理由がなかっただけです。
そして、「もっと楽な方法があるらしい」と聞いても、それをどこで聞けばいいのかがわからない。
都会の会社なら、隣の席の誰かに聞けたかもしれません。「これ、もっと早くできませんか」と。
でも、小さな町では、その「隣の席」がいないことがあります。役場でも、事業所でも、同じです。周りの人も同じやり方で仕事をしているので、聞く相手がいない。
これは能力の問題ではなく、知識にアクセスする機会の問題でした。
だから、聞ける場所になりたい
私がこの町でやりたいことは、それほど大それたことではありません。
最新のシステムを入れることでも、業務を根本から作り変えることでもない。
「これ、どうやるの?」と気軽に聞いてもらえる場所になること。それが最初の一歩だと思っています。
「こんな初歩的なことを聞いていいのかな」と思う必要はまったくありません。むしろ、その質問こそが私にとってありがたいのです。「スプレッドシートって何?」と聞いてもらえたから、私は自分の説明が独りよがりだったと気づけました。
質問してくださる方は、いつも私に教えてくれています。どこから説明すべきなのかを。
おわりに
デジタル化は、目的ではありません。手段です。
毎日1時間かかっていた作業が10分で終われば、残りの50分を別のことに使えます。その50分が、町の誰かにとって少しでも意味のある時間になるなら、それでいい。
紙のままがいい、という選択も、もちろんあります。無理に変える必要はありません。今のやり方でうまくいっているなら、それがいちばんです。
ただ、「便利なのは知ってるんだけどね」で止まっている方がいるなら。
その先は、一緒に考えられます。
お気軽に声をかけてください。
筆者について
株式会社デジタルラボみなの 藤野磨緒
皆野町地域おこし協力隊。株式会社デジタルラボみなのにて、行政のDX化支援や、業務のデジタル化・AI活用、採用支援のお手伝いをしています。
パソコンやExcelの初歩的なことから、紙の管理をどうデータ化するかまで、どんなことでもご相談ください。
【デジタルラボみなの】
https://www.dlab-jp.com/minano
【元記事】